番組改革の先に描く姿とは

  • 番組改編

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 改革の先に描いている姿とは何か。

 JRAの2006年番組が発表された。今改編のコアは短距離路線の整備だろう。改良とみるか改悪とみるかは人それぞれ、競馬観の違いだろうが、この問題も「点」ではなく「線」で捉えなければならない。

  • 日本競馬の将来像

 私が問いたいのは、「JRAが求める日本競馬の将来像とは何か」ということである。

 日本競馬はここ10年ほどで飛躍的な進歩の過程を辿ってきた。シーキングザパールタイキシャトルによる日本調教馬の海外G1制覇。エルコンドルパサーの海外長期遠征。内国産馬ステイゴールドの海外G1制覇。サンデーサイレンスの孫シーザリオによるアメリカG1制覇。

 人々が気付きにくい点では、シェイク・モハメド殿下の日本産馬の購入、タヤスツヨシバブルガムフェロー・ジェニュインなどのシャトル種牡馬の活躍、日本産馬リムノスとシヴァ兄妹(父ヘクタープロテクター)の活躍などが挙げられる。

 ジャパンカップダートが新設され、数々の重賞が国際競走となり、海外からたくさんの馬を呼び集め、開かれた姿勢を見せてはいるが、それが形だけに映るのはなぜだろう。考えうる理由としては、実際に遠征馬が少ないこと。海外の超一流馬が来ないこと。この2点が挙げられる。

 香港は地理的に近いことから今年のサイレントウィットネスのように遠征してくる馬もいるが、欧米からの遠征馬はJCを除くと皆無に等しい。馬産界の中心である社台の目は海外に向き、社台と懇意にする調教師達の目も海外に向いている。今年もシーザリオアイポッパーといった社台系列の馬が海外遠征を敢行した。

 今改革では触れられていないが、検疫システムの改善がネックになっていることをJRAは改革する気があるのかどうか。関口房郎氏の提言でもわかるように、毎年のようにJCのために来日した陣営からも苦言がでる。レース体系を整えて「さぁ外国馬いらっしゃい」と言いながら外国馬が来日しにくい状況を維持させる矛盾の解決を急がねばなるまい。

 国際化3カ年計画とサンスポに書かれているように、国際競走を増加させ、世界と戦う日本競馬をイメージしているならば、レース体系だけではない部分の改革を進めるべきではないだろうか。

  • 夏競馬の空洞化と除外ラッシュ

 JRAが長年抱える問題として、夏競馬の空洞化とそれ以外の除外ラッシュである。
 ローカル競馬であるがゆえの同一メンバーによる、同一距離での競走。小倉競馬の距離バリエーションの少なさは、スポーツ報知本紙記者である和田さんが毎年のようにボヤくことからもわかる。この現象は興行としても問題であり、フルゲートどころか10頭に満たないレースも頻繁に行なわれる。

 それとは正反対の事態である除外ラッシュ。秋の福島は出走予定馬18頭の所に50頭もの登録馬があることもしばしばだ。通常の追い切りが水曜、木曜であるにもかかわらず、出走馬確定が木曜日の昼では、馬を仕上げる関係者に不親切ではないだろうか。この除外ラッシュは秋の福島に限ったことではない。

 今回の収得賞金改正は、この除外ラッシュと少頭数レースの減少を狙ったもので、昇級をたやすくし、降級を難しくする。どれほどの効果があるのか、実際にシュミレーションして考え抜かれた策であると信じているが、結果は来夏以降になってみないとわからない。

  • 短距離路線の整備

 サマースプリントシリーズの集大成がスプリンターズSになるのだろうが、このシリーズのチャンピオンにどれだけの価値が与えられるのか見物である。年度代表馬選考には全く関係のないものという認識でいいのだろうか。重賞が一気に増加したが、これに関しては「実際にやってみないとわからない」部分が大きい。JRAの意図と馬主、調教師の意図が噛み合わない可能性もある。

 春に充実し秋はやや少ない。これが第一印象だが、これはこれでありかとも思う。というのは、牡馬に挑戦しようと思う牝馬だけが天皇賞などに回る傾向は変わらないはずで、秋のG1路線に影響は与えないのではないだろうか。個人的に懸念するのは、春先の競馬で競走馬能力に影響がないと言われている「フケ」を事後報告的に敗因に挙げる陣営が出てこないかということ。後から「フケが出ていて…云々」という記事を読むと白ける。

  • それ以外

 番組改編とは直接関係がないが、JRAに求める改革としては、地方・海外騎手の問題が挙げられる。日本からは自由に行き来してもよいのに、海外からは規制するというのは、どう考えてもおかしい。これではいつまで経っても先進国入りを認めてもらえないのではないか。それに関連して、地方のジョッキーにももっとチャンスを与えるべきだ。免許の一元化を実現し、騎乗依頼があり、調整ルームに入れば地方騎手でも騎乗可能というシステムを望む。

 それから外国人馬主資格。これもそろそろ本格的に議論すべき所にきている。ダーレージャパン地方競馬が席巻されてから開放というのではJRAの印象も良くないし、それでは遅い。

 こうした騎手や馬主の面から見ても、国際化を謳いながら、実際は本格的な国際化に対して壁を作っていることが見え隠れする。JRAが日本競馬に求める将来像とは何か。矛盾のないビジョンを我々ファンに示して欲しい。