感動の波に乗り損ねたダービー

普段は世間に流されて簡単に感動するんだけど、今回のダービーに関しては完全に乗り遅れた。というのも、「苦労人・石橋守騎手の感動のダービー制覇」の背景を何も知らないから。石橋守騎手といえば、ミスタースペインライブリマウントゴッドスピードに騎乗していたというぐらいしか記憶になく、最近では馬券的お手馬ナムラカイソクに騎乗していることぐらいしか知らない。


 それだけに世間が「石橋守がダービーを勝った」という事を誇大アピールしているような気がしなくもない。別に、武豊が勝っても福永祐一が勝っても、柴田善臣が勝っても同様に「感動のダービー」のストーリーが出来ていたような気がしてならない。


 確かに、皐月賞制覇の後、武豊騎手が祝勝会を開いたとかトレセンで会う人会う人に祝福の声を掛けられていたという話や、武豊騎手が尊敬する石橋先輩の話をしえいるのを新聞などで見聞きして、人望があることは知っていたけれども、一般人レベルにどれほど知られていたのかと(追記:『優駿の門』の岡田騎手のようにボロを食べてでも騎乗依頼を確保していたとかいう話なら何て苦労を…と思えるのだが、石橋騎手の苦労をどれだけの人が知りえたのか。マスコミでなかなかGIを勝てなかった=苦労人と取り上げられたから、世間がそう思い込んだだけなのか。高田潤騎手の事も少しは思い出してあげてください)。


 喜んでいる人を非難しているのではなく、こうした感動出来る話題に参加出来なかった事が少し残念で、僻んだ文章を書いている。もっと違った角度からダービーを捉えていれば、石橋守騎手に関するエピソードを付け焼刃でも押さえておけば感動の波に乗れたのになぁ。「どうせほとんどの競馬ファンは誰が勝っても喜んだんだろ?」なんて事は言いませんよ。そうしたライトな競馬観を持った人が多ければ多いほどブームが生まれやすいと思うので。


 ということを考えていた。ミスターシービーが3冠を制した翌年にシンボリルドルフ3冠馬となったように、ディープインパクトの翌年にメイショウサムソンという事があるのか。個人的には、ディープインパクト側ではあるけれども。その対決が実現するならそれはそれで楽しみ。なんせ、今の古馬世代でディープに対抗出来うる存在はハーツクライしかいないんだから、下の世代か海外から挑戦者を探すしかないわけで、その候補は多ければ多いほど面白い。


 サンデーサイレンス産駒最後の東京優駿は2着が最高。それでも連対圏に持ってくる産駒を輩出するんだから凄い事だ。母父サンデーサイレンスを含め、この馬が日本競馬に与えたモノは考えれば考えるほど大きい。


 そうか、3着ドリームパスポートフジキセキ産駒か。オペラハウス×ダンシングブレーヴが地味な血統という記事をどこかで目にしたけれど、その人の認識ではサンデー=良血、非サンデー=非良血という考えなんだろうか。まぁ良血か非良血かなんてのは、一般ファンレベルでは、一頭活躍馬が出ればコロっと変わるモノだからアテにもならない。ファミリーナンバーまで調べてる人なんかそう多くないだろうし。


 確かに地味な存在ではあるけど、オークスを制したカワカミプリンセスも“あの”ダンシングブレーヴ×グッバイヘイロー産駒のキングヘイロー産駒だと思えば、良血の部類に入るだけに、このあたりの良血・非良血のラインは、馬だけの問題ではなく人も含めてマスコミがどう表現するかなのかな。もし武豊メイショウサムソンに騎乗していれば「欧州で一時代を席巻した血統がサンデーサイレンス最後の世代に挑む」なんて書き方もされただろうし。


 あらためてマスの影響力は大きいと、ダービー関連のエントリーを読みながら考えていた。この血統で欧州遠征したら、それはそれで欧州の人は「ファンタスティック」だと思うんだが、ある意味でディープよりも欧州遠征が見たい気もする。


 いずれにせよ、皐月賞・ダービーを制すということは並大抵のことではなく、勝ったメイショウサムソンの関係者の方々、石橋守騎手に祝福の意を申し上げる次第です。おめでとうございました。