英雄であるために

 ゼンノロブロイにとって2005年は自身を証明するための1年になる“はず”だった。

 同厩舎の先輩シンボリクリスエスが成し遂げられなかった秋の古馬G1シリーズ、天皇賞ジャパンカップ有馬記念の3連勝を達成し名実共に日本の最強馬として君臨するはずだった。

 シンボリクリスエスとは違う、他のサンデーサイレンス産駒とは違う、ゼンノロブロイだけの称号を求めて世界へと飛び出した。結果は、わずかに及ばず2着。史上初の2年連続の秋のG1シリーズ完全制覇を目論んだ天皇賞も、牝馬ヘヴンリーロマンスに差し切られ2着。ならば、史上初のジャパンカップ連覇を、と意気込んだレースは3着。

 常に付き纏うイメージ。シンボリクリスエスに9馬身以上ちぎられた馬。相手が弱かったから勝てた馬。タップダンスシチーが海外遠征帰りだったから勝てた馬。

 弱い馬なのか? 決してそのような事はないだろう。どのような相手であれ、どのような展開であれ、勝つことは難しい。昨秋、この馬は史上2頭目という資格を得たのだ。
 
 昨年の有馬記念の後、馬名の由来となったスコットランドの義賊「ロブ・ロイ」に因み「英雄」と呼ばれた。しかし、その言葉は、ディープインパクトという名の新星に奪われた。


 史上初無敗の有馬記念制覇。その権利を持つのはディープインパクトのみ。ゼンノロブロイゼンノロブロイであるために必要なこと。それは打倒ディープインパクトのみである。

 2005年12月25日有馬記念。王者が挑戦者となる日。それは「現役最強」と「英雄」を賭けた戦い。勝負はもう始まっている。