中央と地方の壁

 有馬記念を最後に、今年のJRAが主催する「中央競馬」は幕を閉じた。どうして、この「中央競馬」を強調するかというと、統一G1東京大賞典が12月29日大井競馬場で行われる予定だからだ。多くの競馬ファンにとっての競馬は終わった。しかし、この「地方競馬、統一G1の成功」こそが日本競馬の今後を担っているのではないだろうか。


 ご存知の通り、中央競馬は平成9年の4兆円をピークに年度別売り上げは減少を続け、昨年度は3兆円を割り込み、今年度もディープインパクトの登場による一部レースの入場者増は見られるが、売り上げに関してはディープインパクト効果がさほど見られない。
 また、近年地方競馬の閉鎖が相次いでいるように、日本の競馬界の現状はバブル景気崩壊以後、決して良いことはなく、むしろ悪化の一途を辿っているといえる。


 そうした中で、地方所属騎手が中央へ移籍したり、地方間移籍をしたりといった変化が徐々には起こっている。地方間移籍に関しては、数々の制度上の問題を含んでいるがここでは触れないでおく。

 中央競馬もダート路線の整備の一環として、地方競馬との連携を組み、統一G1を含む統一重賞を行っている。2005年は統一G1が12レース、G2が10レース、G3が29レース行われる予定であった(雪による中止等も含む)。この苦しい日本の競馬状況を打破するきっかけとなりうる地方競馬との交流競走、統一重賞の価値がマスコミを始めとする競馬関係者に正しく認められていないのではないか。


 そうした疑問を感じたのは、ヘヴンリーロマンス松永幹夫騎手による天皇賞(秋)制覇だった。松永幹夫騎手はインタビューにおいて「牡牝混合G1を勝ったのは初めてなので嬉しい」と語ったが、同騎手は統一G1であるダービーグランプリと第一回JBCクラシックをレギュラーメンバーで制しており、日本競馬においては「牡牝混合G1を制したのは初ではない」。これは非常に大きな問題である。馴染みの薄いファンが「中央」のみを日本競馬と捉えるならまだしも、日本を代表する騎手と競馬マスコミが平然と「中央」と「地方」の区別を認めている。


 同じような事例は、田中勝春騎手が先日、全日本2歳優駿を勝利した際にも、G1での連敗が止まったことは大きく報じられず、報道されても「地方の」という言葉書きがあった。


 つまり、競馬マスコミや関係者にとって、統一とは名ばかりの地方のG1レースなのである。はっきりと言ってしまえば、そんな認識であるのなら、名ばかりのG1競走などなくしてしまえばいい。そう受け取られても仕方のない扱いではないだろうか。


 しかし、これは全ての競馬関係者にとってというわけではなく、武豊騎手は自身のHPにおいて『目標に具体的な数字をあげるのは好きではないのですが、今年はG1を10勝します、と年頭に宣言してしまいます』(1月1日コラムにて)と語っている。すなわち、武豊騎手は「統一G1」と「中央競馬で行われるG1」を区別していない。


 本当は、統一G1である東京大賞典が終わってから書く予定だったのだが、タイムパラドックスが出走予定ということでそれよりも前に書くことにした。それは、もしタイムパラドックス東京大賞典を制すると年内G1勝利が4勝目(川崎記念帝王賞JBC)となる。しかし、それらは全て統一G1である。今年のダート競馬の主役といえば、3歳馬カネヒキリであり、そのカネヒキリジャパンダートダービー(JDD)とダービーGPと統一G1を2勝し、タイムパラドックスとの直接対決となったジャパンカップダート(JCD)も制している。


 年度代表馬選考において、もしG1勝利数で比較すること、及び、一年間の活躍ということを考えるとタイムパラドックスカネヒキリと優劣付けがたい成績である。しかし、カネヒキリ絶対有利だと思われる理由は、単に直接対決を制したからというのではなく、中央で行われた「G1」を制したという理由にあるような気がしてならない。

  • 世界を目指す前に

 地方競馬の経済状況、今後の日本競馬が世界に向けて発展していく時代の流れ、JRAの動きに対して、日本国内における「二分化」が大きなテーマであるといえるだろう。そうした中で、競馬関係者自身が「中央」と「地方」を差異化し、「統一」に向けた意識を有していないことが非常に由々しき問題である。


 JRAはエルムSや武蔵野Sの番組位置のように地方競馬との意思の疎通を無視したような競馬番組を作るのではなく、アジアチャレンジなどでアジアや世界と繋がる競馬国となるには、まず日本国内の「中央」と「地方」の問題にもっと力を入れるべきではなかろうか。そして、名ばかりではない本当の意味での「統一」を目指して欲しいと思うのである。


 繰り返すが、あえて統一G1である東京大賞典が行われる前に書いた。今は東京大賞典が終わった後のマスコミや関係者の反応が楽しみで仕方がない。レースだけではなく、マスコミの反応にも注意しておきたい。

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