関東馬の不振は馬券売上げ減少の要因か?

 土曜日の桜花賞トライアル、アネモネ賞では関東馬アサヒライジングが優勝。日曜日に阪神で行われたフィリーズレビューでも関東馬ダイワパッションが平成元年コクサイリーベ以来、17年ぶりの優勝を果たし、近年不振と謳われる関東馬の意地を見せた格好となった。


 近頃では、スポーツ新聞の予想欄や識者のコラムの中でも、関西馬の強さよりも関東馬の不甲斐なさを指摘する論調が目立ち、競馬番組の中でも「関東馬にもうちょっとがんばってもらいたい」という同情コメントすら見られる。


 そうした中で、どうしても気になる言葉がある。


 「関東馬の不振は馬券売上げの減少に大きな影響を与えるのか」ということだ。


 私自身は生まれてこの方京都を出たことはなく、競馬を始めてからも常に関西で過ごしてきたので、馬柱は関西のものばかりを見てきた。また、数年前に、他場の馬券発売も9R以降から、全場1Rからの発売となり、それに対応した紙面作りによって、他場の馬柱を目にする機会も増えた。


 また、以前はプロ野球セ・リーグパ・リーグのような対立思考が、競馬界の栗東美浦にもあった。それは競馬物語などを読むと「タマモクロスという一頭の馬が南井と言う名を全国区にした」という記述などからもわかる。


 日本の競馬がグローバル化することによって、美浦栗東、さらには地方と中央という垣根は少しずつではあるが、以前と比べるとはっきりと下がってきたと感じられる。


 話が逸れてしまったが本題である「関東馬の不振は馬券売上げの減少に大きな影響を与えるのか」について、識者の意見を見ていくことにしよう。


 スポーツニッポン記者の井上泰司氏は、著書『なぜ弱い関東馬』(1993年)の中で、「平成4年の勝利数、関西馬2,048勝、関東馬1,351勝、その差697勝。年々この差は開く一方。この現象に競馬ファンはいささかシラケ始めた。「頑張れ関東馬」と言いたいが、馬が悪いんじゃない。目ざめよ、関東の厩舎人」と指摘している。


 スポーツジャーナリストの二宮清純氏はコラム『坂路調教は魔術か 調教師 故・戸山為夫』の中で、こう指摘する。全文引用。

 関西馬の躍進ぶりは勝ち鞍からもはっきりと見てとることができる。1988年には関西馬1682勝に対し、関東馬1630勝とほぼ互角だったのに、それ以降は1774.5勝対1559.5勝(0.5勝は同着を意味する)、1812.5勝対1535.5勝、1954.5勝対1432.5勝、そして92年は2048勝対1351勝と、ついに全レースの6割を関西馬が制覇してしまった。
 我が世の春を謳歌する関西(栗東トレーニングセンター)の調教師たち。春の恵みを感慨深いものにしているのは、冬の時代の苦い記憶にもよる。かつて関西馬関東馬に対しまったく歯の立たない時代があった。ダービーの戦績を例にとると、1981年から90年までの10年間で、関西馬が優勝をとげたのは82年のバンブーアトラスの1回だけ。G?といえば、今とは反対に関東馬の独壇場だった。


 日本経済新聞記者の野元賢一氏は、『「関東馬が弱いと売り上げにも影響する」とJRAは懸念するが、打開策はないのが現状である。」』(2001年1月15日/日本経済新聞 夕刊)と指摘している。


 ここで一番重要なJRAの売上げの推移を見てみよう。(経年売上げの推移 表はこちら→売上げ推移)


これを見ると、馬券の売上げは平成9年(1997年)までほぼ右肩上がりの傾向であることが読み取れる。となると、二宮清純氏や井上泰司氏の指摘する関東馬の不振がJRAの馬券売上げの減少の大きな要因であるという指摘は、正しいとは言えないではないだろうか。


 売上げから見てみると結論は、「関東馬の不振が馬券売上げ減少の要因とは決定付けられない」ということだ。

  • 個人的感想

 ここからは、個人的な印象論を述べたいと思う。
 今回取り上げたのは売上げと勝ち星の比較だけなので、相関などは確かめようのないことであり、関東馬の不振だけが売上げ減少の要因全てではないことも留意している。しかし、単純に関東馬が強ければ、馬券の売上げが伸びるということではないこともわかった。


 馬券売上げ減少の背景には、日本経済全体の不景気が最大の要因であると思っているし、もしかしたら、こうした関東馬の不振が積もりに積もった結果、馬券売上げの減少が今になって起こっているのかもしれないということも考えられる。


 馬柱を見ても関西人の私には、いつも見ている馬が走っているだけなので、特に関西馬関東馬を区別するといった線引きはなければ、関東の方の「関西馬を買っていれば儲かる」的な思考はしていない。


 JRAの売上げが減少していることと、今日指摘したことは関係がないのかもしれない。個人的には、マークシートの無駄を減らすことや、ウインズ・競馬場のおばちゃんや女の子を減らすことを考えるべきだと思うし、おばちゃんが無駄に多い状況は労働組合がいかに抵抗しようとも実現すべきであろうとも思う。
 それ以外にも、ファンサービスの改善や情報公開の透明化など、改革しなければならない点は多いように思う。



 ということで、僕を採用してくれませんか?JRA様(笑)

  • 追記

 読み直してみて、野元氏の発言の文脈からすると、JRAは地域差毎の売上げデータから、関東馬が弱いと売上げが下がる。逆に関西馬が強くなって、売上げが伸びたと指摘しているのか。このあたりの資料だれかお持ちではありませんか? ちなみに、あったら今日書いた文章は大幅訂正しなきゃならないんですけどね(笑)