コスモバルクの受け止め方

 コスモバルク快挙のニュースを横目で見ながら、日本人にとっての快挙は「道営所属の地方馬が国際競走を制した」ことであり、外国人にとっては「日本の馬がシンガポール航空国際Cを制した」という受け止め方なんだろうと思う。


 シーザリオが勝ったアメリカンオークスを日本でいうオークスと同列に報道する日本のマスコミを相手に考えても仕方がないが。(Japanese Oaksと同じ扱いになるのはおそらくKentucky Oaksのはず。たとえ、Kentucky Oaks が国際G2で、アメリカンオークスが国際GIであったとしても)。


 シンガポール航空国際Cは2000年に創設され2001年に国内GIとなり、2002年に国際GIに認定されその年に勝利したのがグランデラということで一応の体裁を保っているような気がする。日本のマスコミにグランデラを知っている人がどれだけいるのかはさておき。


 話が逸れてしまった。日本競馬にとって、コスモバルクという馬の存在は「外厩制度」を端に発する「地方競馬」と「中央競馬」の枠組みの問題であった。だからこそ、ラフィアン岡田総帥は「地方所属」に拘り続けている。


 おそらく関係者コメントで続々と登場するであろう「天皇賞に出走することすら叶わない馬」が国際競走を制すことが出来る日本競馬の二面性について最もインパクトを与える勝利になったのではないか。もっとも、それが今回の遠征の最大の目的であろうし、事実、勝利したことによって、それがクローズアップされる(はず)。


 皐月賞ジャパンカップで2着になった馬がトライアル(古馬GIの)に勝たなければ、GIに出走することが出来ず、海外GIに出走する方が容易いという現象。日本馬が続々と海外遠征にその矛先を向ける時代に、国内でそのような逆転現象が起こっている現実。


 日本の競馬が世界へ向かえば向かうほど、クローズアップされる地方と中央の問題。国際招待レースでほとんど来日しない外国馬枠がたくさんありながら、出走する事が叶わない日本馬。


 シンガポール国際Cが香港や豪州のシーズンオフを狙ったレースのような位置付けでもあり、日本で距離適正に悩む馬にとってのステップというか今後の目標になりうるレースでもある。


 もう一つ、このレースにダイアモンドダストを出走させた高岡秀行師。遠く離れたシンガポールの地で、日本競馬が抱える問題点に向き合った両氏が激突したのも何かの縁であろう。もしかしたら、今後、豪州で生産された日本血統の馬とコスモバルクと、豪州のセリで購買された中央からの遠征馬が対決するような画期的な勝負が見られるかもしれない。


 日本の競馬ファンや関係者は、外国人ファンや記者と違う視点でこのレースを捉え、この勝利が、この遠征が与えた「意味」を受け止める必要があるのではないか。


 この快挙で日本の調教制度、馬産制度が変わるようなことがあれば、それはディープインパクト凱旋門賞を制すことよりも、もっと大きな意味をもたらすことになるであろう。

 (ディープが凱旋門賞で勝利することも日本競馬にとっては、唯一無二の価値を持つ事を理解した上で。ディープはSS×輸入繁殖牝馬、日本の生産界の王者・社台グループであるのだから)。