何かが違った宝塚記念

 これまでディープインパクトの出走するレースは菊花賞天皇賞(春)の2回を観戦した。今回の宝塚記念が3度目の観戦となり、おそらくは関西での最後の勇姿となるだろうレースだった。


 この日京都競馬場で感じたもの。それは「緊張感のなさ」であった。過去2度のレース、菊花賞では3冠への挑戦。天皇賞には、有馬記念で失った最強馬の称号をもう一度自らの元へ引き寄せるためのレース。そうした意味を持っていたと思っていた。今回のレースは「海外壮行戦」。それ以上でも以下でもなく。


 関西テレビ馬場鉄志アナウンサーが天皇賞のゴール前「ハーツクライよ、ハリケーンランよ待っていろ!!」と叫んだ。おそらくは、それが日本の競馬ファンの多くの気持ちだっただろうし、天皇賞前の報道の流れから(天皇賞後は海外へ)、多くのファンがそうなるものだと思っていただけに、今回の宝塚記念は、何か消化不良のレースだった。


 意味がないと評しては失礼だが、リンカーン以下に圧倒的な力の差を見せ付けた天皇賞とほぼ同じメンバーで行うレースにディープインパクトが出走することに意味があったのか。メイショウサムソンを始めとする3歳馬との対戦、海外からの遠征馬を迎え撃つ総大将。そうした伏線がなければ、今回の宝塚記念は全く盛り上がらなかっただろうし、結果として、そうした「条件」が揃わず、手薄なメンバーで行われた事によって、ディープインパクトがこれまで築き上げてきた「この馬の走るレースを観られる貴重さ」というものが、これまでの一連のレースに比べると軽かったような気がした。


 あくまでも個人的な印象なので、これまで以上に感動した人もいるかもしれないし、宝塚記念に出走したことに大きな意味を受け取る人もいるだろう。それは否定しないし、そういう見方もあるだろう。


 ただ、この何とも言い難い「印象に残らないレース」は後々のディープインパクトの生涯成績を振り返る中でどう捉えられるのか。おそらくは「海外への壮行戦」「追い切り代わり」だと思う。


 しかし、これから秋のレースは違う。凱旋門賞は世界への挑戦であるし、ジャパンカップは世界を日本で迎え撃つ総大将としての役割と、日本のレースの中で最も意味を持つ東京芝2400m。そして、引退レースとなるであろう有馬記念。そこでは3歳馬との対戦とハーツクライへのリベンジも待っているであろう。


 それらの意味のあるレースが控えている事に対してワクワクするし、とにかく無事に駆け抜けてくれることを願ってやまない。


 ちなみに、雨の影響もあったのか、過去2走(菊花賞天皇賞)に比べれば、場内は相当にガラガラな印象で、過ごしやすいといえば過ごしやすかった。その代わりに「ディープ、ディープ」というビギナー的な熱意が感じられなかったのも事実で、「緊張感のなさ」がある意味でディープインパクトブームの終焉かとも思ったが、それは宝塚記念というGIの持つ、独特の隙間レース的なイメージか。先ほども書いたように秋のレースではまた盛り上がる条件が揃っているし。


 別に、ディープ→リンカーンダイワメジャー3連単1万円を買って負けたから「寒かった」と書いているのではなく、いつもと違う印象は競馬場に着いた時からレース直前までずっとあったし、レースが終わってからもさして盛り上がってなかった。


 ついでにいうと、天皇賞ディープインパクトナリタセンチュリー→いっぱいを買った自分が浮かばれないというか、馬券ベタというか。どう考え直してもこの3連単は買えない(前走GIでブービーの馬なんか買えるはずがない)ので、馬券に関しては、もうしょうがない。バラゲーさえいなけりゃ…。