マスコミの次の戦略は…(ディープインパクト)

 もっとちゃんとした書き方で、この話は触れたいと思っていたけれども、上手くまとまらないので、雑文の形で。


 ディープインパクトの現役生活を三つに分けるとするならば、第一章が三冠物語。第二章が海外遠征記。第三章がライヴァルとの死闘。おそらく有馬記念で負けた段階で、第三章の伏線は出来上がっていたと思うが、面白い事に、ミスターシービーが三冠を達成した翌年にシンボリルドルフが現れたように、ディープインパクトの翌年に二冠馬メイショウサムソンが登場。


 ディープインパクトVSハーツクライVSメイショウサムソンという対決で暮れを盛り上げようと必ず動き出すはず。年間無敗でGIを勝ちまくったテイエムオペラオー年度代表馬選考で満票を戴くように関係者からは一応の評価を受けたが、JRAからは何の誉れも戴かなかった。一方のディープ様は単なる皐月賞馬の分際で(あえて汚い表現で)、ダービーの日に銅像が建てられるというJRA様からのお墨付きを得た。そのディープ様が有馬記念で敗れるという波乱でJRA様は八百長疑惑まで晴らし、なおかつハーツクライを世界レベルの馬に昇華してしまうことによって、有馬記念での敗戦を人々の記憶の中で「悪くのないモノ」にすり替えつつある。


 ディープインパクト=英雄とイマイチ浸透しているのかしていないのかわからないニックネームだが、このニックネームがここに来て、ようやく意味を持つ。それは、英雄という言葉が持つ意味にある。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』では「英雄」をこう表記している。

ヒーローは、普通の人を超える力や知識、技術を持ち、それらを用いて一般社会にとって有益とされる行為、いわゆる英雄的行為を行う。多くの物語では、これを阻止しようとする悪役、敵役が共演することになる。


 生まれた瞬間から、ディープインパクトは英雄として、そしてメイショウサムソンは地味な存在として受け入れられる環境が構成されていった事を考えると、星の下の運命というのは残酷かつ面白いものである。


 確かに、ディープインパクトのレースには、マスコミが扇動しているから何かを感じるのではない「観れば分かる魅力」があり、そこに言葉はいらないように思う。その一方で、メイショウサムソンという存在をその対極的見地で捉えるならば、競馬の背景的知識が必要になる。つまり、素人目から見て、ディープインパクトは分かりやすく、メイショウサムソンは地味といわれるが、素人には「何がどう地味」なのかがわからないのだ。


 血統背景や騎手を始めとする人の物語。牧場やオーナーを含めた物語をメイショウサムソンの走りを理解するには必要なのに対して、ディープインパクトのレース振りというのは、それを超越したところにあるのではないかと思う。


 だがしかし、盛り上げるためにはマスコミの皆様の何かしらの「演出」というか「街宣」が必要なのであって、無敗の三冠、日本競馬史上初の凱旋門賞制覇(予定)の後に、現役生活において求められるものは、世代を超えたライヴァルを倒す(ハーツクライにリベンジ、三冠馬(予定)メイショウサムソンを倒す)ことぐらいしか、貧困な予想家には思いつかないのである。もしくは欧州を制したその勢いで、来年あたりにドバイWCBCクラシックを目指すということもあろうが。


 例年にもまして、今年のクラシックは昨年の反動が出たのか、あまりにも地味なのか、ネット上でも秋競馬に対する盛り上がりは薄いように思われる。短距離路線の駒不足や何度も述べるように地味キャラが影響しているのか、あるいは海外に目が向いてしまっているのか。


 ディープインパクトが去った後の競馬界をどうするかは、とりあえずディープインパクトがターフを去るまではお預けという風潮がマスコミの方々やJRA様に蔓延してるような気がしてしょうがないのだが。にわかファンを捕まえるなら、あの手この手で捕まえないと、サッカーの日本代表と同じように、一瞬の盛り上がりしか運んでくれないので、そこで必ず勘違いしてしまう反動は自分達にダメージとして返ってくる(マスコミ批判、主催者や協会批判として)。ので、考えられる策は、早め早めに打っておくか、一応の計算はしておかないと、にわかファンと一緒に、ちょっと根付いたファンも逃しかねないので、ここに注意は必要だ。


 幸いにも、ハーツクライがあわやというシーンを演出しながら、欧州の底力に屈服したという一応の形をみて、やはり「本場は強い」という暗黙のメッセージはかすかに人々の心に根付いた。それがこの後どう影響してくるかというのにも興味がある。


 ディープ批判ではなく、もちろん心から勝って欲しいと願ってはいるものの、その後の競馬界の姿、日本競馬が世界の背中を追い続けてそこに並ぶ、あるいは交わしてしまう瞬間の後に、突然先頭に立ち、前に何もいなくなったキングヘイローのダービーのような状態にならないかを危惧している。