競馬人気は衰退してる…の?
水上学さんのブログ『白線の内がわ』は当ブログもアンテナに入れさせていただいている。競馬マスコミ関係者のレース以外の部分に対する批判や意見は目にすることがあまりないので、競馬ブログの中でも参考にしたいブログ上位の存在だ。
その中に出てきた一文を勝手ながら引用させていただく。
場外開催の東京は、私見だが7割近くが50台以上の男性。その内の2割は、確実に老人が占めている。この事実は重い。
当方、秋に齢23歳を迎える大学生であるが、以前に比べて競馬場に足を運ばなくなった。その理由は3つ。1つは、目の前で馬が走っていないこと。2つには、PATで馬券が買えるようになったこと。3つ目には、馬の走っていない競馬場に足を運ぶだけの理由がないこと。3番目が1と2を足した結論的な理由であるが、簡単に分けてみた。
JRAの売り上げと参加人員を資料から比べてみる。資料は今年の春にJRAの採用試験を受けに行った際に戴いたもの。推移を全部書くのは大変なので、何年かおきに。
まず、売得金額の推移であるが、ここでは開催場、ウインズ・パークウインズ、電話投票の3つに分類された1984年(昭和59年度)から見ていく。次のデータはその内訳である。簡略化のため、数字は全体を100とした比率となっている。左から、開催場・ウインズ・パークウインズ、電話投票。
昭和59年 27:65:8
平成元年 20:71:9
平成 5年 16:73:11
平成10年 12:61:27
平成15年 9:50:41
平成17年 9:48:43
次に、総参加人員の推移であるが、これも先の売得金額の推移を同じ表記の方法である。
昭和59年 10:81:9
平成元年 9:80:11
平成 5年 9:81:10
平成10年 7:67:26
平成15年 5:52:43
平成17年 5:48:47
このデータから分かることは、単純に、電話投票の普及による競馬場とウインズ・パークウインズからの人離れだと言える。なぜなら、総参加人員に関しては、平成17年度は169,044,180人で過去最高を記録しており、売り上げの最も多かった平成9年度の167,385,441を上回っているからだ。どのような調査方法を用いているのかがこのデータからは正確にはわからないが、このデータだけを見る限りそういうことになりそうである。
この20年間で、開催場の競馬参加者比は半分になり、ウインズ・パークウインズも4割減の約6割に。その代わりに、電話投票による参加者は5倍以上に増えた。
このデータの原因を考えられる限り挙げてみよう。これは自分の経験上なので、ベテランの方々を始めとする他の人とは違うかもしれない。
1.観に行きたいと思うほどのレースがなくなった
2.1と関係して、競馬よりも優先することが増えた
3.在宅競馬で済ませられる環境になった
4.馬が走っていてこそ競馬場に行く
5.非開催時の競馬場に魅力がない
ざっとこんなものだろうか。競馬場まで自転車もしくは電車で1時間で着ける場所に住んでいる人間にとって、面倒臭いと思うぐらい競馬場に行くまでの魅力を感じなくなった。
先の競馬人気衰退の理由に関して、「昭和の空気がしなくなった」と書いたが、それは、馬券を握り締めて、目の前に走っている馬を応援するというスタイルとは掛け離れたようになってしまったからだろうか。家にいて、テレビを観ながら、パソコンあるいは携帯に向かってキーボードを叩く。画面に表示される買い目。的中しても、外れても、どこか実感の湧かない機械的な文字の羅列。
競馬人気の衰退を売り上げの低下だけで捉えるとすれば、授業の中でも指摘されたように、不景気の影響による支出減少。その一言に尽きる。総参加人員の増加という項目だけ見れば、競馬人気は現在でも右肩上がりで、衰退しているとはいえないからだ。
もう一つ、大学に入って友人を競馬に誘うことが以前よりも増えたが、やはり馬が走ってないウインズ、パークウインズに誘うのは、競馬の魅力を伝えられない気がして、気がひけてしまう。ウインズは、汚い、狭い、おやじの集まりというイメージがやはり強く、10年ぐらい競馬をしている自分としてもそう思うのだから、初心者をいきなりウインズには連れて行きたくはない。
JRAは今夏、札幌や小倉でアイドルやタレントを起用して、夏競馬の盛り上げに励んでいる。また、パークウインズとなっている京都競馬場には歌手の愛内理菜が来てコンサートを行ったようだ。しかし、そんなことで、競馬に対する人気やイメージが上がると本当に考えているのだろうか。木村拓哉や中居君といったアイドルの起用、あるいは明石家さんま氏のような大物タレントを起用した結果、どういう効果があったのか、あるいは意味がなかったのか、その点をきっちりと分析した上での、今夏のアイドル起用なのだろうか。その点を疑ってしまう。
個人的には、モックンと鶴田真由さんのCMが一番好きだった。二人が白黒のような画面でGIのファンファーレを口ずさむ。そのシンプルさに惹かれたのだが、最近の馬鹿っぽいCMには、いささかうんざりしてしまう。
話が何だかあさっての方向に随分と流れてしまった。ともかく、競馬人気を支えるのはやはり競馬場に足を運んで、目の前でレースを観て、その素晴らしさを共有することにあるのではないかと訴えたかったのであるが、それに関する論拠は全くもって示してなかった(笑)
自分で、総参加人員が過去最高であることを改めて打ちながら、「あれ?競馬人気衰退してへんやん」とつっこんでしまったのである。
いつから競馬が衰退したと言われだしたのか。また、それはどのような背景か。どのようなファン層にそれが現れたのか。あるいは、ファン層にどうような変化が現れたのか。社会全体の社会観の変化に関係はあるのか。そのあたりを調べる必要がありそうだ(終)