凱旋門賞まであと10日

 いよいよという想いとあと10日しかないという想いが複雑に絡み合っている。宝塚記念から前哨戦を使うことなく本番を迎えるになって、ディープインパクトの挑戦が間延びしてしまうのではないかと思っていたけれど、ハーツクライキングジョージハリケーンランシロッコの前哨戦対決が見られるなどして、一般人にはともかく、競馬ファンにとっては宝塚記念以後はあっという間の80日だったのではないだろうか。


 一つは、天皇賞が終わった直後の「さぁ世界への挑戦」という誰しもが思った瞬間が、宝塚記念によってはぐらかされたという言葉は悪いかもしれないけれど、今から振り返ると一息入れられたのは正直なところ。ただ、そのおかげで個人的にはもう一度ディープインパクトの走りを競馬場で見ることが叶ったし、トウカイテイオーオグリキャップをライブで知らない自分にとって、「競馬場が一体となって燃える」という状況を感じることが出来る近年で唯一の馬だった。


 ここでも何度か書いてきたように、ディープインパクトが勝っても負けても、明るい未来は一瞬で、その先は長いトンネルが続いているのではないかという不安がある。勝った場合は、日本競馬が長く追い求めてきた挑戦の終了。負けた場合は、ディープインパクトという日本競馬最強の馬でも勝てないこと。その不安を抱くこと自体がディープインパクトという競走馬の特殊性であり、絶対的な存在の証でもあるのだろう。


 しかし、日本競馬の挑戦の終了というのは、訪れることがないことだとも思う。シーキングザパールが、タイキシャトルが制した海外GI制覇という快挙が終わりではなく、一つの始まりであったように、今後もアメリカ・ブリーダーズカップへの挑戦やイギリスダービーへの挑戦が続いていくだろう。


 負けた場合にも、エルコンドルパサーが勝てなかった以後も挑戦が続けられたように、決して諦めることのない夢への挑戦が続けられるのだろう。


 競馬ファンとして純粋に、この挑戦の瞬間を生きて迎えることが出来る幸せを噛み締め、一生に残る記憶と共に、この日々を大切にしていきたい。