括弧の中の言葉はどっちだ

 ハーツクライは協議の結果、引退との事。確認しておきたいことは山ほどあるのだが、先のエントリーで不満は言ってあるので、それに追記する形で。


 「種牡馬になることも決まっており…」というジャパンカップ後の橋口調教師のコメントのニュアンスについてははっきりさせて欲しい。それというのは、このコメントの最初に括弧付けがされていると推測出来る。そして、その解釈は二通りある。


 一つは「(引退後には)種牡馬入りが決まっており…」の場合。もう一つは「(来春から)種牡馬入りが決まっており」の場合。前者はこの馬の実績と血統背景を考えれば妥当なことであって、さして気にはならないが、問題は後者。ハーツクライは今夏のイギリス遠征で敗れて以後、橋口調教師を始めとする関係者の話から、当然の空気として来年も現役続行、海外遠征が行われるものと思われていた。少なくとも自分はそう捉えていた。


 だが、ジャパンカップの数日前に喉鳴りが突如として発表された。その発表に対する橋口調教師のコメントは「レース後に実は喉鳴りでしたと発表しては馬券を買ってくれたファンに申し訳がない」とのことであった。


 来春から種牡馬入りが決まっていたのであれば、それも事前に発表すべきであるしどうせ社台スタリオンステーションなんだから。喉鳴りは関係なし、状態に不安無しと言うから当然来年も現役続行と思ったから、来年への意味も込めてディープとハーツの対決を期待していたのだが。まぁ、そうした意味を勝手に込めたこっちが悪いのだが。


 やたらと紙面に喉鳴りの文字が躍る。目の前の餌に飛びつくのがマスコミの習性とはいえ、橋口ショックは今後の競馬界の情報開示に一石投じることになってくれれば。そんなことがあったおかげでディープインパクトが絶好調と言い続けてたのに実は喉やってましたという嘘コメントが消えたものあれだが。新聞のコメントなんて妄想とこうなってくれたらいいなぁの集合体みたいなモンだからあんまり信用出来ないな、やっぱり。あと、ハークツライは負けたら年内で引退ならそれも先に言っとくべきだと思うが、そこらへんはどうなんだろう。


 と自分でも書いているように、馬券を買う、あるいは予想をする際におけるメディアを介したコメントなんてのは購買者にとって無理益に近く、むしろ競馬という興行を盛り上げるためのプロパガンダの役割を一手に担っているといっても過言ではないのか。CMのように単なるプロパガンダであれば悪い情報は流さなくていいし、絶対勝てるとか、生涯最高の出来とかめでたいコメントを流していればいい。コマーシャルと違って、JAROに嘘の広告だと処分されることもないわけで。


 レース前「休み明けでも乗り込んできたし、初戦から動ける態勢。」
 ↓
 レース後「休み明けが影響したかな。叩いた次は変わってくると思う。」


 レース前「前走は休み明けでも走れた。叩いた今回は今度こそという気持ち。」
 ↓
 レース後「どうしたんだろう。わからない。ニ走目のポカとしか考えられない。」


 のような、レース前後でコロっとひっくり返るようなコメントがズラーっと並んでいるのが普通であって、そりゃ、馬券をたくさん買って欲しかったら良い事しか書かないし、そういったコメントしかしないわなぁ。あらためて、昔に自分で書いたメディア・リテラシーという文章を思い出した。今


 最後にどうしても解せないのは、ルメールは「のどというより、休み明けが大きかったと思う」とコメントしていたが、橋口調教師は「のど鳴りがジャパンCの敗戦につながったのは間違いないし、息づかいが全然違っていた」とコメントしていた事。


 種牡馬入りの括弧入りのコメントといい、結局のところ、真実はどこにあるんだろうか。ディープインパクトの事といい、今回のハーツクライの件といい、見えない部分が不自然な構図として明らかになっている。それだけに、素直に競馬を楽しむ事が出来ない。それが少し残念だ。