今年の海外遠征をまとめてみる

 香港は残念な結果に終わったと言っていいだろう。今年のメンバーなら一つ、あわよくば二つは何とかなるだろうと思っていたけれども、そんな考えは甘かった。特に緒戦のアドマイヤメインソングオブウインドの惨敗といってもいいであろう敗戦にはショックを受けた。
 スプリント路線はどうしようもないし、ダンスインザムードはもうお釣りがないだろうとは思っていたから負けてもさほど驚かず。
 カップアドマイヤムーンは最後に切れ味を発揮してもうちょっとという所だったが、プライドに短頭差届かず。


 個人的には2006年は日本馬における海外遠征のターニングポイントイヤーになると思っていた。それというのも、このブログでも何度か述べてきたが、ディープインパクトという一頭の馬の存=日本競馬となっていた。あるいは、馬場さんの言葉を借りると日本近代競馬の結晶=ディープインパクトであるかのような錯覚を知らず知らずの内に抱いてしまっていた。それはあくまでも個人的にであって、人によって捉え方は違うだろうから深くは振り返らないけれど。


 とはいえ、今年はディープインパクト以外にも大勢の日本馬が海外に遠征し、ハーツクライのドバイ制覇、コスモバルクシンガポール航空国際C制覇、デルタブルースメルボルンC制覇など、一年に一つぐらいあれば良さそうな快挙がいくつももたらされたのである。


 個人的にずっと懸念していた「ディープインパクト凱旋門賞挑戦によって日本競馬が一つの区切りを迎えるのではないか」という問題は、ディープインパクトが敗れた事と禁止薬物が検出された事の二つの結果から、簡単に流された、あるいは、最初からそんなに大きな意味を背負ってはいなかったように思えてきた。それはこれからも日本競馬が前進していくための良い意味でもあり、賛否両論はあろうが国民が一体感を持って一頭の馬を応援した、することが出来たチャンスに達成出来なかったことは、残念でもある。


 今年の日本馬の遠征は以下の通り(間違い、抜けがあれば訂正しますので指摘よろしくです)。 

  • 3月

 3月25日に行われたドバイワールドカップdayには日本馬が大挙出走。
ドバイワールドカップ(GⅠ・ダート2000m) カネヒキリ(繰り上がり4着) スターキングマン(7着)
ドバイシーマクラシック(GⅠ・芝2400m) ハーツクライ(優勝)
ドバイデューティフリー(GⅠ・芝1777m)アサクサデンエン(15着) ハットトリック(12着)
ドバイゴールデンシャヒーン(GⅠ・ダート1200m) アグネスジェダイ(6着)
ゴドルフィンマイル(GⅡ・ダート1600m) ユートピア(1着→移籍)
UAEダービー(GⅡ・ダート1800m)フラムドパシオン(3着) ガブリン(7着)

  • 5月

 5月14日に行われたシンガポール航空国際C(3歳上、芝2000m)ではコスモバルクが優勝。

  • 7月

 7月1日に行われたキャッシュコールマイル(G3・芝1600m)でダンスインザムードが優勝。翌日に行われたアメリカン・オークス(GI・芝2000m)でアサヒライジングが2着。
 同29日に行われたキング・ジョージ6世&クインエリザベスDSではハーツクライが3着。

  • 9月

 9月30日に行われたダニエルウィルデン賞(G2) ではピカレスクコートが2着。

  • 10月

 10月1日に行われた凱旋門賞ではディープインパクトが3着入線(→薬物使用により失格)。
 10月21日に行われたコーフィールドCではデルタブルースが3着、ポップロックが7着。

  • 11月

 11月7日に行われたメルボルンCではデルタブルースが優勝、ポップロックが2着。

  • 12月

 12月10日に行われた香港ミーティングの結果は以下の通り。
香港ヴァーズ ソングオブウインド(4着) アドマイヤメイン(8着)
香港スプリント シーイズトウショウ(10着) メイショウボーラー競走中止
香港マイル ダンスインザムード(12着)
香港カップ アドマイヤムーン(2着) ディアデラノビア(7着)


 大体こんなもんだとは思うけれども、南半球へ遠征しているゼンノゴウシュウフサイチオーレトーセンダンディ)については各人で調べてみると面白いかも。日本人の女性騎手を乗せたりして、我々の知りえない部分で日本「人」競馬に尽力しているようだから。


 ディープインパクトの敗戦とその他の馬の健闘あるいは、敗戦を受けて思うのは、月並みながら「適正」と「体調」の二つ。適正に関しては、「レース番組の選択」という言葉も含めての意味で、日本の競馬でなかなか勝てない馬でも、国や競馬場によっては、また違った一面が見えるというのはエイシンプレストンでも感じたことだが、デルタブルースを始めとする国内競馬でなかなか勝つことの出来ない馬が海外の伝統的なレースで勝利を挙げることが出来たことからも再確認した。


 もう一つの体調に関していえば、関係者の方々の努力や、海外遠征を積み重ねていく中でノウハウの蓄積しかなく。ディープインパクトハーツクライを襲った喉鳴りなどの問題は、今後も引き続き起こるであろうケース。そうした中で、やはり情報開示はされるべきだろうし、馬券を買う買わないという国内での問題だけでなく、馬券を買えないというスタンスにある「海外遠征」は「スポーツ」としての側面が色濃くなると思うので、そうした馬が帰国、あるいは残った国内戦を戦う馬を応援するファンのためにも改善されるべき点は残ったと思う。とはいえ、これはマスコミと関係者の関係という点においてだが。両者に歩み寄りの努力が必要だろう。


 ジャパンカップの海外からの遠征馬が少なかった事をはじめ、日本がパート1国入りを果たしたことも一つのきっかけとなって、来年はさらに「国際GIの是非」と「国内GIのローテーション」に関する議論が活発化しそうだ。そのあたりはまた別の機会に論じる事として、2006年という一年が日本競馬の海外遠征にとって、抜かすことの出来ない一年であったことは重ねて言うまでもないことだろう。