今さらながら

 乗り遅れたというよりも、何かしらのメッセージは残しておきたいとは思いながら、何を書き残せばいいのか自分なりに考えていたら、こんな時期になった。とはいえ、有馬記念ディープインパクトに関しては、ここまで散々語ってきたせいか、今さらながら語ることはもう何もないかなと。


 競馬ファン(もはやライトではない)として、ディープインパクトという馬がいたこの2年間に何をしてきたかと自分に問いかけてみると、それなりの事はしてきたつもり。ディープインパクトに関するエントリーは他のどの馬よりも多く書いただろうし、馬そのものだけでなく、それを通して「日本競馬とは何か」という文脈で書いてきた気もする。
 また、ディープインパクトが出走した関西でのGI(菊花賞天皇賞春・宝塚記念)には足を運んで、この目にその姿を刻んだ。あの菊花賞だけは、競馬を初めて観に行った時(トゥザヴィクトリーが2着に負けたオークス)から今までで一度も味わったことのない空気を感じることができたし、それは一生語ることのできる思い出となった。
 加えて、今年は競馬に色んな初心者の方を連れて行って(ディープインパクトが出走する、しないに関わらず)、それなりの貢献もできたと思う。


 ここからは有馬記念について少々。
 誰かがウインズに居る時に「この中の9割ぐらいがディープインパクトに勝って欲しいと思ってるんやろな」と言ったような。実際の所、皆がそう思っていたかどうかはわからないが、もしそうだったとするならば、JRAがどうこうとか、マスコミがどうこうではなく、また馬券も別にして、ディープインパクトという競走馬しか持ち得ない魅力があり、皆がそれに憑りつかれたような部分があったのだろうと個人的には思った。何はともあれ、結局は、勝って良かったんじゃないかと思う。


 レース自体にどうこうの話も色々な所で巻き起こったようだが、個人的にいえば、ディープインパクトを包むことは展開と脚質的に出来ない(先行馬が多い組み合わせ)として、ダイワメジャーの外から被せる競馬も誰もできないのかと。結局、この秋一連の競馬で、ダイワメジャーに外から並んだのは毎日王冠の直線で絡んだダンスインザムードぐらいなもので、後は、好き勝手ダイワメジャーを走らせていた。外から併せたとしても大丈夫なぐらい精神面で成長した可能性もあったかもしれない。結局、今年の有馬記念は何か一頭を負かそうとして挑んだ一戦ではなく、それぞれがそれぞれの競馬をした結果、こういう結果になったということだろう。それはディープもダイワメジャーも、それに絡まなかった馬も。


 ドリームパスポートの前が詰まったことは「あぁ、やっぱり」という感じ。内田博幸騎手が頼まれて、この馬でどうやったらディープインパクトを負かせるか考えたら、ロス無くインを突いて出し抜けするしかないと思うはず。今回は4角先頭を宣言する馬が多く、またディープインパクトが外から捲りを決めてくる展開では、インコースに馬が密集するのは中山では仕方のないこと。そこが開くかどうかは、運のレベルに近いと思う。着狙いなら4角で外を回す手もあっただろうが、勝ちに行くにはインを突くしかないという、自分のイメージに近かったこともあり納得の結果。


 メイショウサムソンドリームパスポートに関して、力関係でいえば、ダービーの時点で既に逆転していたんじゃないかとレース前に話していた。NHKマイルCあたりから続いた内を通った馬が圧倒的に強い競馬はダービーでも同じだったし、マイルCでも一番強いレースをしたのはキンシャサノキセキで、同じくダービーでも外から追い込んだドリームパスポートだった。
 とはいえ、結果的にレースで1着を獲ったのはメイショウサムソンであり、ロジックであり、馬場に対応した競馬ができるかどうかも、大事な競走能力と騎手の役目である。タイトルを獲れなかったことで、最優秀3歳牡馬はメイショウサムソンで異論はない。

責任といえば、他の騎手、調教師たちの「罪」はもっと大きい。アドマイヤジャパンを叱咤し、奇襲で泡を吹かせようとした横山、ハーツクライが完調ならディープと互角かそれ以上の馬であることを見抜いて、正攻法で攻めたルメール以外に、誰がディープインパクトを本気で負かそうと思ったのか?叶わないならせめて一太刀、それが競馬ではないのか?外から被せたり、徹底マークしたり、外へ張ったり、何とかして苦しめようという騎手が、全く見られなかった。それどころかみな戦う前から白旗を掲げるコメントを出す始末。そこには戦いがない。本来競馬とは戦いではなかったか?

 水上さんのブログから引用させていただいたが、ここは自分とは主張が異なる部分。もし話になるが、メイショウサムソンディープインパクトを倒すことだけに執念を燃やし、後方3番手からピッタリ併走したとしたら、個人的には納得できない。アドマイヤフジとか差し馬にディープインパクトをなぜ苦しめようとしないのかと言われても、苦しめることもできないかと。それぐらい加速力が違う。ディープインパクト凱旋門賞のように前に行ってくれるならまだ何か策も打てるだろうが、後方で競馬されてる馬に何かしようと思うと、他の全騎手が引っ張りきりで密集を作るぐらいしか方法がないかもしれないと考えると、そんな競馬をされたらされたで、また批判も巻き起こるだろう。


 これは極端な例えとしても、個人的には、今年の有馬記念はそれぞれの騎手が自分なりのベストパフォーマンスを目指して競馬したように見えた。それだけに、清清しい競馬だったと言える。